去年は沖縄に行ったから今年はどこに行こう」なんて、言っていたはずなのに
「北海道がいい」とか「ネズミの国」がいいとか言ってたはずなのにー
気がついたら那覇空港にいてしまうような沖縄好きの戯言です。
No.43 薬用植物と門中大事典
久しぶりに実家の妹から電話があった、何やら、家を片付けていたら、25年も前に逝った父親の遺品が何点か出てきたと言うので、週末に実家に寄ってみた。
妹が出してくれた段ボール箱には、裏に日付の書かれた古い写真だったり、薄い本や沖縄民謡のSP盤のレコードが入っていた。もう正常に動作するレコードプレーヤーも無いけれど、無造作に重ねられたレコードのほとんどは、紙製のケースが破れて剥き出しだ。”谷茶前節””デンサー節”・・ラベルの張られた黒いレコードの山に、盆や正月に民謡を一日中流し続けていた父の姿が思い出される。
「欲しいの持って帰って」という妹の了解を得て、少し埃っぽい”薬草植物と民間療法”って古い本を持って帰った。妻に経緯を説明して、改めて本をみると表紙には”皇漢医方研究会本部”と書いてあり菊の御紋が貼られている、薄いのに固いカバーがついた本で、薬草がカラー写真を付けて紹介されている。昭和二十五年が初版で50ページの薄い本だけれど父が薬草に興味を持っていたなんて初耳だった、ただ、本の中身よりも表紙の裏に挟まっていたレシートを見て驚いた。

上本町にあった近鉄百貨店のロゴが入ったレシートで、”現売 4500円”と読める。 「え!高っか!」、日付を見ると[83/12/29]とあったので40年以上も前の話だけれど、父が亡くなったのは1984年10月なので、その1年前に購入した本だと思うと、体の不調を感じていたのかと考えたりもするけど、単に興味が湧いただけのような気もする。
それはそうとして、本をもう少し見てみると[改訂版:昭和45年 三千円]と記載されていたころから、ひょっとすれば古書なのかも知れない。実は、もう一冊”琉球音楽の研究”という昭和42年発行の非売品の本も見つかったため、先ほどのレシートの謎が解けた。
レシートを見た時に4500円という金額の下段に50円とあったので、「ああ消費税か」と見逃していたのだけれど、昭和58年に消費税はなく、もう一冊50円の本も買っていたことが分かる。どうやら、一緒に見つかった非売品の本の価格だろう。
「ああ納得した」じゃない!50ページのこの本の定価が3000円というだけで驚くのに、レシートは4500円だぞ、つまり高額転売された古書の価格と言う事になる。専門書とは言え、この薄さでこの価格は現在のお金の価値で考えても、かなり高額な本だと思う。近鉄百貨店で購入したものだろうから、古書展でもしていたのかも知れないけど、薄いけど固い表紙のついた専門書に百貨店ならではの価格に「うわっ、高いなぁ。よう、こんな本に4500円も出して買ったなぁ」と思わず声が出た。
「親子やねえ」
妻の声に振り返ると、「なんで?」と聞く僕に、彼女は黙ったまま本棚を指差した。雑誌や神社巡りの本と並んで、ひときわ分厚い”門中大事典”がある。10年くらい前に阪神百貨店で開催された”沖縄展”で買ったものだ、”門中”と言うのは一族や親戚に近いものですが、父方の血縁者で同じ祖先を持つ者たちとなります。”一族”と大きく異なるのは血脈に縛られるので、嫁いできた嫁などは直系血族でないために門中には入らないのですが、現在では門中ごとに多少の変化も見られるようです。この本は、家紋や系譜などから沖縄の数多くの門中を解説した事典です。その隣にあるのは、同梱されていた付録の”沖縄家紋集”です。
妻は本棚に近づいて、重い本を両手で抜き取ると裏表紙を僕に見せます。そこに「定価15,000円」を見つけて話せなくなった僕に、「な、親子やろ」彼女の決め台詞が刺さります。

No.44 不謹慎な望み
これから沖縄は台風の季節を迎える、宮古によく行く友人は2日間も飛行機が飛ばなくてタイヘンだった話を、この季節に繰り返します。それは関係がないけれど、僕は最終日の那覇空港を発つ間際になるといつも思ってしまいます・・『航空会社の整備不良とか、急な天候の変化で、”しかたなく”沖縄にもう一泊する羽目にならないかな』
そうすれば、飛行機会社が説明に来るでしょう。「本日は悪天候で飛行機が飛びませんので、別の便か払い戻しになります」中には、怒る乗客がいるかも知れない。『何、言ってんだよ!明日も仕事があるんだ、何とかしろよ』『大きく迂回して飛ばせないのか!』理不尽な要求を言ってくる客もいるかも知れなません。『じゃ、近所のホテルの部屋を用意しろよ、今晩の飲食代も出せ』とか、無茶苦茶な客も現れるのではないでしょうか。周囲を海に囲まれた沖縄に来るのだから、天気予報を見ておけば「最悪の事態」くらい予想できたでしょうに、航空会社が英断しなければ、大惨事に繋がることが理解できないのだろうか?なんて、考えたかも知れません。
「航空代金の払い戻ししかできませんが・・・」と、か細い声で詫びる職員にこう言ってあげるのです。「欠航は、あなたの、責任じゃありませんよ。この時期ですからね、旅行保険にも入っていますよ。それに、もう一泊したかったところだったんです」
本音だから、上手に言える。