「去年は沖縄に行ったから今年はどこに行こう」なんて、言っていたはずなのに
「北海道がいい」とか「ネズミの国」がいいとか言ってたはずなのに
気がついたら那覇空港にいてしまうような沖縄好きの戯言です。
No.22 魚の泳ぐ杯に泡盛を満たす

随分と前に、神戸で見つけた沖縄雑貨のお店で、日本酒のお猪口より、ひとまわり大きな杯を見つけた。値札を見ると2000円。「安い」と言う人がいるかも知れない値段だろうけど、100円均一でお皿や茶碗まで手に入る時代に小さな杯=ぐい呑み程度の器に2000円は高い。沖縄雑貨店でなければ当然、素通りするような状況だったけれど、魚の紋様がイイ!藍の背景がイイ!これは参った。小さなぐい呑みに2000円は高いと思うものの、2000円という金額にビビるような年齢でもなかった。気づくと、いつの間にか傍にお店の人が立っていた。
お店の女性が言う、「これは金城次郎さんのお孫さんの作です。敏男さんら子供さんの作品はアチラの棚に置いてますよ。コチラは敏男さんのお子さんだったと思います」魚紋の作品をしげしげと見ている僕に、売るつもりなのか、退散させるつもりなのか、「もし、次郎さんの作品がよろしければ、ケースを開けますよ」店員さんの指差す方向をチラ見すると、お孫さんの20倍?いや100倍は超えていそうな価格のコーナーを”紹介”されている。
2000円に悩む僕に「無茶を言うな」と思ったが、なんだかこのぐい呑みが安く思えてきた。それに、次郎さんや子供世代の作品と違って、この魚が優しく頼りない。実は、値札シールを見る前から器の魚紋が気になっていた。
銘を見ようと裏返すと「山」と書いてある。「ヤマ?」首を傾げながら値札を見返すと[金城吉彦]とあったから、「あ!ヨだ」 作者名がまさかカタカナで書かれているとは思わなかった。
2000円で悩む僕から店員さんは離れていったけれど、いつの間にか100均好きの妻が立っていた。「絶対に買わないと後悔するヤツやん」沖縄には彼女も寛容だ。いや、普通に2000円を払うのに困るような生活ではないけど、当時の食卓は100均食器が多かったから、妻に申し訳なかった。
家に帰ると、待ちかねたように安い泡盛を注ぐ。そして気付いた、泡盛を注いだ杯を泳ぐ魚がキレイだ。「用の美」って生意気な言葉を思いつくけど、まさにソレだと思った。「使ってこその器だねぇ」僕のご満悦の様子に妻が笑いながら言う「安い満足やわ」
でも、最初に気に入ったのが”吉彦”さんで良かった。敏男さんや敏昭さんのぐい呑みでも、結局、買っていたと思うから。吉彦さんだったおかげで、数年後には、「ヨ」の小皿も買って、大好きなスクガラスを乗っけられたもの。
それから20年近くかかって”次郎”さんのぐい呑みも手に入れたけど、今でも吉彦さんの”やちむん”を見ると欲しくなってしまう。
No.23 僕の怒る基準なんてテーゲーもいいところ
通勤電車の車内で、座席でコンビニで買ったであろう”おにぎり”を食べている女性がいた、具材までは確認できなかったが、ガサガサと言う音が場にそぐわない感じがして少し眉を顰めた。きっと、彼女はこの後、化粧まで始めるのかも知れない。
沖縄から帰ったばかりだったせいか、ふと思った・・・ガサガサした音に気づき、彼女を見た時に手元あったのが”ポーク玉子おにぎり”だったら!僕は彼女に眉を顰めるどころか、コンビニか手作りかを先に確認するだろう。食べ終わった彼女が化粧を始めたら、「車内なのに」と思うかも知れないけれど、化粧ポーチが紅型だったら、絶対、「根は良い子なのに、今朝は慌てたね」なんて、異常に好意的に捉えたかも知れない。
乗り換え駅のホームでハンバーガーを食べる若い男性がいた。風向きのせいか、普段駅のホームでしない筈の”匂い”が気になり、少し嫌な感じがした。『ちゃんと、包み紙はゴミ箱に捨てろよ』くらいの気分でペットボトルのコーラを飲む姿を眺めた。

なぜか、結局、化粧まで器用に済ませた彼女を思い出して”思った”。彼が、ホームで食べてたのが、ぬーやるバーガーだったら?匂いのする方を見た時に赤い文字で”JEF“と書かれていたら、『緑だったらゴーヤーバーガーなのになぁ』とか思うかもしれない。「ハンバーガー」って返しを期待して「ぬーやるバーガー」と話しかけてしまうかも知れない。
散歩中の公園で、練習中の音ハズレのトランペットが耳障りでも、音ハズレの三線だと応援してしまうどころか、絶対に弾いてる人を見に行くなぁ。「てぃんさぐぅぬぅ花や〜♫」なんて歌っていたら一緒に歌い出すかも知れない。
僕の怒る基準なんて、テーゲーやっさ。
No.24 沖縄好きは二度見する
車でも、一瞬二度見する。まして、歩行中なら、じっくり二度見して確かめずにはいられない!それが沖縄好きのサガというものです。
沖の字が入っている”看板”、縄や覇の字の上の”文字”は二度見して確認してしまうのです。むしろ、琉の字に続いて球でなかった時の落胆。看板やお店の主に何の落ち度もないのに沖縄好きから向けられる”ガッカリ光線”
「だから、何だ!」と言われても何もない、ただ、街に「日本海沖で・・・」や「はえ縄漁法・・」て見ても、ポスターで「覇王」と一瞬で全体像を見ているはずなのに、それでも、ひょっとしたら「何か沖縄に関係あるの?」とか思ってしまって、沖縄好きのアナタは二度見してしまうのです。