おいしい話【てびち】

おいしい話

「おいしい話」は沖縄で食べた料理の話が中心ですが、あまり、お店の名前は書かないのでグルメガイドにはなりません。でも、沖縄で食べても内地で食べても、おウチで食べても、思い出すと食べたくなる料理が多いのです。


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 テビチの唐揚げ

【解説しよう!】テビチとは豚足のことである、内地では居酒屋さんで”焼き豚足”を見たことがあるかも知れないが、沖縄ではカツオベースの出汁でトロトロになるまで煮込んで食べるのが一般的で、国際通り近くのおでん屋さんの具材で見かけることがある】

 沖縄から帰ってきたばかりの友人から、恩納村で「テビチの唐揚げを食べてきた」と「教えてあげている」風の自慢をされた。何でも、唐揚げにしたテビチに甘辛いタレがかかっていて、「凄く美味しかった」と話しているが、ボクの「食べた事ないわ」の答えに友人は満足そうだ。

 帰宅してから、友人から聞いた話を妻にした、「テビチを唐揚げにするんやて!意外な食べ方やけど、美味しかったって言ってたわ」「へぇ〜、食べてみたいね」って、感じの反応を予想していたボクに意外な応えが返ってきた。

「テビチの唐揚げなんか、だいぶ前に作った事あるしぃ!その時に『美味しいけど、俺は煮付けた方が好きかなぁ』とか言われたし。結構、作るのに手間もかかっていたのに、『なんか、大きなテビチやったらもったいないなぁー』とか、言われたし!」

 妻の勢いに押されて記憶を辿ってみた・・・そう言われると、食べた事があったような気もするか?食べたような、食べていないような、でも彼女が言うのだから食べたのは間違いないのだろうねぇ、食べた記憶は何となくするような気はするけど・・・さすがに味の記憶は残ってないなぁ。

(やっぱり、調理の仕方とか味付けとかかな?)と、一瞬、思ったけど、声に出ないように慌てて口を塞いだ、これ以上、不用意な発言をすると・・・妻のテビチが飛んでくる!

親切な店主の「ボク、テビチって豚足のことだよ、豚さんの手」

コラーゲンたっぷりのテビチで、女性はお肌ツルツル!男性は、お肌テカテカ!になるような気がするけど、実際のところ、男女関係なくお肌にコラーゲンは最適なのでしょうね。

もう20年以上も前のことですが、僕ら家族が初めて沖縄旅行に行ったときのことですが、恩納村にあった食堂で、少し遅めのランチを食べた時のことです。

どのメニューにもご飯と味噌汁がついてくるのは、それまでに過ごした時間で分かっていたから、夜のご飯も考えて、大きさの設定もある”そば”にしようと決めるまでは早かったのに、何そばを食べるのかを意外に戸惑ってしまいました。でも、ボクも妻も”本場”に来たのだからと、結局、定番メニューにしたのですが小学校低学年の二男がなかなか決められずにいます。

「パパとママはソーキそばで、兄ちゃんは沖縄そばに決めたで」そろそろ、決めるように二男に声をかけると、「ボクはテビチそばにする!」と定番メニューを外してきたが、妻の目は『やっぱりな』と語ったようでした。(実は、ボクもテビチそばにしようか迷っていたので少し悔しい気持ちです。)

「すみませーん」と声をかける前に、空いていた店内で僕たちの話し声を聞いていた店主が、フロアに出てきます。

『テビチそばは、その小さな子でしょ。あのねお客さん、テビチって豚足のことよ。豚の足を煮付けたものがそばの上に乗ってるわけ、わかる?』

二男はキョトンとしている、話の途中で、僕たち観光客を心配してくれたんだろう店主の気遣いに気づき、嬉しく思いました。初めての家族で来た沖縄旅行だから観光客らしい格好をしていたせいもあるだろうけど、ウチの子の大好物が”テビチの煮付け”だと知らないので、まだ説明しそうな店主さんに笑顔で「ありがとう」と返し伝えました。「どうやら、沖縄でテビチを食べてみたかったみたいです」

おでん

もう随分と昔のことですが、子供達がまだ小学生だったころに沖縄好きの友人2人も一緒に沖縄旅行した時の事。彼女達は行く前から色々と調べて楽しいプランを次々に出してくれていたので、あっという間に最終日の那覇泊まりの夕食。
「おでん食べませんか?」おでんも関東煮も大好きだったので異論はないものの『沖縄で』という違和感がありましたが、僕の「?」を感じ取った彼女らのプレゼンは続きます。

「違うんですよ!」(何が違うんだ?と思いましたが、プレゼン中にツッコムのは野暮と言うものです)「なんと!おでんの中に豚足が入っているのです」「テビチ?」と聞き返しますが、当時は彼女達の沖縄ランクは”初級”だったので言い返してきます。「ん?豚足ですよ、豚の足です、これ見てください」と、差し出した雑誌は”沖縄版”で『特集那覇の夜』のページにおでんのお店が2店舗掲載されています。付箋がついていたのは、会員制のスナックのようなお店で酔客の来店防止のために施錠してあるのが”普通”の隠れ家的おでん屋さんでした。

「むっちゃ美味しいって書いてあるんですよ!、那覇であえて”おでん”な夜、安全策で子供たちも安心ってどうですか!」確かに、沖縄でおでんも面白そうで、しかも名物がテビチとなれば食べない手はないなぁと皆で盛り上がったので、首里のホテルから子供たちも一緒に結構な距離を歩いて移動しました。

飲み屋さんの立ち並ぶ通りの一画にあるお店は「見つけやすい」とは言えない所にあり、彼女達のプレゼン情報のとおりに入口は施錠されていましたが、女将さんが開けてくれた店内に入ると、案外広くて家庭的で観光客と地元の人でほぼ満席でした。隅っこのちゃぶ台のような机に案内されて、おでんメニューを渡されるとお馴染みの大根やごぼ天と並んで”テビチ”がありました。

運ばれてきたおでんは、どれも味がよく染みていて、最高に美味しいのですが、僕と妻に微かな違和感が生じます。ですが、友人の彼女たちは興奮気味で「うわっテビチ(すでに豚足とは言わなくなっていました)、すごく美味しい。トロットロで、コラーゲンが肌に補充されていく」「ほんと、美味しい!これ見て、昆布が巻いて入ってる。出汁やのに完全におでんの具やわ、あああ、しかも美味しい、何これ大根溶けるで!」そうなんです、美人の女将さんの作るおでんはどれも美味しくて、念願のテビチは、食べやすいように骨が外してあって、ふわとろの身にカブリつけるのです。

確かに美味しい、彼女達の言うことはどれも正しくて、大根も昆布巻きも美味しいのですが、僕と妻の違和感の答えを、テビチ好きの二男が教えてくれます。
「おいしいなぁ、いつもより骨がないから食べやすいわ」
あああ・・・と合点が行きました。すごく美味しいのですが、家で妻のつくる”テビチの煮付け”と限りなく近い味なんです。カツオ、昆布、塩、大根(夏は冬瓜)・・練り物から出るコクが違うくらいかなぁと妙に納得してしまいました。誤解のないように言いますが、すごく美味しいのです。妻の作る煮付けよりも美味しいのですが、「格段に美味しい」ほどでもないところから来る”違和感”でした。

ちなみに、僕の母親もおでんに昆布巻きを入れていた人だったのです。勝手に、「沖縄おでん!」ってイメージに振り回された僕と妻がハードルを上げ過ぎていただけでした。
でも、お店の流行る理由は分かります。もちろん、おでんの味、安心感漂うお店の雰囲気、慌ただしく働きながらお客さんに目を配る女将さんのお人柄も揃っていての”満席御礼”だったと思います

※ でも、この稿を書いていて「久々に行きたいなぁ」と思って検索したら閉店されていました。あの笑顔の女将さんが亡くなったことが原因のようでした。ご冥福をお祈りします。

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