沖ハマりの日常 vol.35

沖ハマりの日常

去年は沖縄に行ったから今年はどこに行こう」なんて、言っていたはずなのに
「北海道がいい」とか「ネズミの国」がいいとか言ってたはずなのにー
気がついたら那覇空港にいてしまうような沖縄好きの戯言です。

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№86 町の小さな薬屋さんから

名護の親戚のネーネーの顔を立てるような形で薬屋さんまで付いてきてしまったのは3年前。お客さんが三人も居れば満員になる町の小さな薬屋さん。70歳になるネーネーの力説をムゲにはできずに成り行きで買った上等お値段の軟膏だったけど、たまたま私らに“合った”のか、思いのほか良く効く薬で手首の炎症も抑えるし凝りの痛みが引くのも早い、それに軟膏なのに塗った後のベタベタがすぐにサラサラに変わるのも魅力だった。

上等の値段はしたけど、高級品を扱うように大事に使っていたから、ちょうど1年で使い切った。どこにでも売っているのだろうと思って、近所のドラッグストアを探してみたけれど見つけられない。それではと、販売元からオンライン購入と考えたけれど、二つの理由から購入を断念した。ひとつは、「あれ?店で買った方が安くね?」と思ったこと、もうひとつは、「今年も名護に行くから買えるかぁ」ということ。

だから沖縄で買うことにした。

「あれ。ウチみたいな店に観光の人が来るのは珍しいね」親戚のネーネーを伴わずに一人で入ってきた(たぶんナイチャーに見えた)私に店主が話しかける。『前に沖縄の親戚に連れてきてもらったんです』と、返すと、リピーターに気を良くしたのか、「ネーネー、そこの花をもらってね。プレゼントするから」と、店の隅に置いてある小さな鉢植えを指さした。『ありがとうございます。たくさん置いていますね』親戚のネーネーから聞いていた花だったからプレゼントしよう。

「毎年、今頃になったらお客さんにあげるわけよ」店主が笑顔で話す。『そうなんですか。キレイですね』小さなプレゼントは確かに喜ばれそうだけれど、飛行機に乗せてまで持って帰りたいか?と聞かれたら悩ましい。「じゃ、ネーネーにも案内ハガキを送るよ。また来なさいね」大阪に住んでいると告げたコチラの困惑は無視して、店主は「お客様ノート」に記載を勧めるので、(沖縄の小さな薬屋さんから”年末感謝の花プレゼント”のハガキが届くのが楽しくて)住所と氏名を記入した。

ところが、翌年の12月になってもハガキは来ない。だけど、やっぱりよく効いた軟膏が底をついてきたから、名護に行ったついでに店を訪ねてみたら、驚いたことに店が無くなっていた。確かに小さな薬屋さんだったけれど地元に愛されている感じがして潰れるとは思わなかったから、少なからずショックだったけど、念のために検索した場所が記憶通りに訪ねた店の位置とズレているのに気づく。

「あれ?場所が違う?」もしかして移転したのかも知れないと、地図の情報通りに車を走らせるとすぐに“探し人”の名前の看板を見つけた。

前の年より少しキレイになって、少し広くなったお店に入ると、見知った店主が「いらっしゃいませ」と声をかけてきた。どうやら、夏が過ぎてからバタバタと移転したらしくて、今年は花のプレゼントはなかったらしい。『そうなんですかぁ』と、さほど残念でもなかったが、「今年はコレを用意したの」と店主が出してきたのは手書きのアミダクジ。結構、細かく線が引かれていて「どうぞ、線を書き加えて」とクジの公平さを際立てている。恐らく試供品やら売れ残り品の処分を兼ねているのだろうけれど、意外に「ありがとうございます」と素直に出た“当たり”もあって、発売元が東京の会社の品をわざわざ沖縄で買う甲斐があったと思う。それに何より、沖縄の小さなお店の店主と知り合いになれるのが嬉しい。

『ハガキが来なかったんです』残念さを込めて、少し文句を言うと、「ごめんね、お店の引っ越しでバタバタしていて、今年はハガキを出せなかったの」『いえいえ、すみません』と、“お詫び”に慌てて“お詫び”を返す。

『じゃあ、来年はハガキを持ってきまーす』と、笑顔でお店を後にしてから1年経つけれど、今年もハガキは来ない。でも、これでまた話をするキッカケができる。もしも、「内地の人にハガキを出しても仕方ないさ」なんて思っていたら、今年も上等の軟膏を買ってから来年こそハガキがもらえるようにお願いしよう。去年の「前に書いてもらった住所でいいね」という言葉に“てーげー”な雰囲気を感じていたから、ハガキが来なかったことにも笑える“沖縄好き”ですから。

№87 虎視眈々と狙われている

前から、こんなに猫がいたっけ?有名な「てんぷら屋」さんの近くの橋の袂で”さかな”と”アーサ”を食べようとしたら、どこからともなく現れた猫たちが近づいてきます。
ここで、ひとつ注釈が必要になってくるのですが、沖縄で言う「てんぷら」は内地でいう「天ぷら」とは同音異義語です。ごめんなさい、完全に違うとまでは言えないのですが、最初に食べた時の驚きがいつまでも残っているのです。サクサクっとした「おかず」としての天ぷらよりも皮が厚くフリッターのようなてんぷらは「おやつ」に近いと思います。どのお店にも置いてある「さかなのてんぷら」は内地の食堂に掲げられることはないでしょう。だって、ナイチャーは「なんの魚かを書かないと!」と考えるでしょ。僕は「まぐろかな?」と思いつつも、時々味が違っているので、「何かの魚なんだろうな」と理解して「さかなのてんぷら」を注文しています。いまだに何の魚か知らないのですが、どこのてんぷら屋さんに行っても必ず注文するほど美味しいのです。

てんぷら四種

その美味しいおやつの「てんぷら」を狙っているのか、僕らの周りに猫が集まってきます。彼らの様子から、多くの観光客の手によって明らかに”餌”として”てんぷら”に慣れているようです。

別のお店に行った時には屋外テーブルの上に飛び乗ってくる猛者までいました。それはさかなでもアーサでもイカでももずくでも、モコモコした衣が美味しいので欲しがっているのでしょう。いわゆる「猫なで声」で居座る彼らは、餌として与えられるのを待っています。

でも、僕らはあげない。

まだ、こんなに猫が多くなかった頃に端を少しちぎって食べさせたことがあったけど、今にして思えば「そういうのがダメだった」と思います。”餌”をあげない僕らに彼らは甘えた声を出しますが、追払いはしないけど絶対にあげないオーラで対抗します。観光地に居座る術を備えている彼らは一定の距離以上に詰めてくることはありません。

一向になびかない僕らに”無駄”を悟った彼らが少し離れた時、うっかりと、さかなのてんぷらの最後のひと欠片を落としてしまったのですが、膝の痛みでゆっくりとかがむ僕が拾うより早く一匹の猫が素早く餌と化したてんぷらを奪っていきました。本気になった猫は動きが素早い!
一定の距離まで引き返した猫はあっという間にてんぷらを食べ、「次の餌を落とす」のをじっと待っているのです。そう、まさに息をひそめて『虎視眈々』と狙う様は、猫のくせに虎のようです。

その様子を見て、「虎はネコ科やん!」と気づき、なぜか大笑いしました。

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