去年は沖縄に行ったから今年はどこに行こう」なんて、言っていたはずなのに
「北海道がいい」とか「ネズミの国」がいいとか言ってたはずなのに
気がついたら那覇空港にいてしまうような沖縄好きの戯言です。
No.40 一週間(だけ)経過
弱った・・ もう沖縄に行ったばかりだという事を忘れている。

いや、覚えている。次に行きたいところまで覚えている。
No.41 僕は沖縄に囲まれて仕事をしている
アキレス腱を断裂してしまい入院していた仕事のツケが色々と溜まっている。時間に追われても何度も見直して、ミスのできない仕事をこなしていくのに疲れて、ふと前を見ると”沖縄音楽フェスのチケット”が目についた。古謝美佐子・夏川りみ・うないぐみ・・・夏川りみは枚方市民会館に行った時以来だ「エイサーの夜」なんか歌えばいいなぁ・・と、勝手に思考が休憩する。
チケットの横にある筆立て中の”沖縄限定ボールペンに気づく”、シーサーや紅型が描かれた本体や少し太い文字は、細かい仕事の書類を作成するのには向いていないが、サインするくらいの時には太くて濃い線は良い。視線を本棚にまで移すと、最近興味のある”遊び琉歌”なんて歌集が並んでいる。サンパチロクと言われる独特のリズムでしまくとぅばを駆使して謳うのは、内地の僕には難しいが、大好きな”てぃんさぐぬ花”が同じリズムだと知ると”琉歌”は”唄”だなぁと納得してしまう。
youtubeで流しっぱなしのBGMは、いつの間にか沖縄民謡から沖縄ポップスに変わってBIGINの栄昇の声が聞こえる。
机の前の壁を見上げると、本島北端の安須森(あすむい)の杜と知念岬公園の写真が飾ってある。天界と人界の間に青い光が映っている写真と、あずまやの向こうに青い海が広がる写真だ。
「OKINAWAが多いなー」と思いながら、窓際を見ると焼失する2年前の首里城の写真があった。
もう見ることの叶わない「中山世土」って書かれた額や正殿を思い出す。棚にぶら下げているのは妻が作った紅型のマスクで、中に冷感素材が使ってあって夏でも使いやすい。

棚の上に置いてあるガジュマルの木は水をやらなくても大丈夫って言われて、水をあげなかったら一時危険な状態になって妻に叱られた。
手元を見ると、僕のスマホには少しポコっとしたシーサーのシールが貼ってある
、スマホの横に置いた財布は、那覇の”紅琉”で受注生産の上等の品で、大切な友人たちが僕の退職祝いに贈ってくれたものだ。大のお気に入りになってしまい、今でも彼女たちに感謝する、それに紅型の財布を選ぶセンスの良さが素晴らしくて、僕のツボを心得ているのが嬉しい。
財布の中に入れたカードはヤンバルチムドンドンでWAONと鳴くやつだけど、持っているのが嬉しいだけで数年間一度も使ったことがない。
そろそろ、現実に戻って仕事をしないといけないと思いながら、ついに、かりゆしウエアに着替えてしまった。
No.42 沖縄旅行をキャンセルしたある年の5月の話
バチン! 変な音に気づいて足元を見たけれど、体育館シューズにぶつかるものなんて何もない。それもそのはずで、何かが当たったように感じたのはバドミントンコートの中で、思いついた鉄骨の棒なんて立っている筈がなかった。と、感じたのは、およそ1秒の出来事。次の1秒で僕は尻餅をつき、噂に聞いていた”アキレス腱断裂”だと直感した。まだ、痛みがなく、そっと左の足首に手を当てると、あるはずのアキレス腱が無いことを実感できた。「あああ、切れたなぁ」
驚いた妻に運び込まれた町の整骨院では、手術はできなくて、生まれて初めての松葉杖の使い方を指導してくれただけだった。この頃になると、かなり痛かったりもしたけれど、なぜか「松葉杖を使う自分」にテンションが上がってしまい、ちょっと楽しかった。
ところが、アキレス腱を断裂した時期が悪かった、「最悪だ」と、言っていい。なぜなら、半月後に沖縄旅行を控えていたから。「飛行機になるのに松葉杖は邪魔になるよなぁ・・いや、手術を旅行の後まで延ばしたら入院はしなくていいか、あ、逆にすぐに手術したら退院してるかもな・・・どっちしても、松葉杖は確定だろうなぁ」と、「旅行には行く」前提ですべて考えていた。
のだが、医者から「強制的にヤメろとは言えませんが、動き回ることや飛行機に乗る気圧の変化など、悪化する以外に考えられません。絶対にヤメろとは言いませんが、行くという選択肢を考えている事が既におかしいですよ、確実に悪化しますから」
呆れながら説明する医者の言葉を、ほんの少し無視しようと思っている僕だから、妻には「そら、医者にしたら責任あるから厳し目に言うわ」と、軽く話しながら、松葉杖対策を相談しようと思っていたが、妻が「今回はキャンセルしよ」と、既にキャンセル料が発生するくらいに日にちが迫ってきているのに言い出した。
「へ?」僕は、大丈夫だと思うと繰り返したが、「誰が考えてもアキレス腱を切った状態で旅行したらアカンのはわかるやん」と強めに叱られてしまった。
足の指まで使っても足りないくらいの沖縄旅行で初めてキャンセル。
ショックだった、旅行に行けなくなった事実よりも、キャンセル料の支払いよりも、沖縄の神様に拒絶されたようで凹んでしまった。他の旅行先ならともかく、沖縄に行けないなんて考えたこともなかった。(これは、ウチの兄も一緒でキャンセル不能のツアーをよく選んで、少しでも旅行代を安くあげていたが、僕の怪我以降はキャンセルできるツアーに変えていた。)
本来なら旅行に出かける予定の日が近づいてきたが、近づいてきたのはそれだけじゃなかった、なんと、この時期には起こり得ないような大型の台風2号が沖縄に近づいている。
発生した時から全国ニュースで進路が取り沙汰されるほどの大型台風で、猛烈な勢いを残したまま沖縄周辺に停滞しそうだという”予報”が出ている。赤い丸の端を繋いだ直線の中心に、最も高い進路の予想コースが点線で示してあるけれど、まっすぐに沖縄に向いていた。
出発を予定してた日には那覇が暴風雨圏内に入っていて、大型台風が停滞した期間は旅行の日程と重なった。松葉杖で名護の神社にお参りできる暴風雨じゃない、そもそも松葉杖で歩ける風じゃない、雨だけならともかく、暴風は怖い。
もし、沖縄に行っていたら、名護の山に登ったり、恩納村の海を見にいくのは必須だったから、松葉杖でなかったとしても転倒や事故などで危なかったような気がする。
「神様に拒否られたのでなく、守ってもらえたのかな?」沖縄って、そんなトコだとあらためて、思わずにはいられなかった。「アキレス腱を切る以外に、方法はなかったですか?と、神様に問いたい気持ちもあったけど」妻にぼやくと、「切っても行こうとしてたクセに」と言われ、「あれ以上、行こうとしたら足くらい折られたかもね・・」なんて怖い追い討ちまでかけられました。